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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)15451号 判決 1990年1月29日

主文

一  被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスと被告越智功との間の、賃貸人を被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンス、賃借人を被告越智功とする昭和六二年一二月九日付の別紙物件目録一記載の建物についての、期間三年、賃料一か月金三〇万円、期間中賃料支払済、譲渡・転貸ができる特約付の賃貸借契約はこれを解除する。

二  被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社及び被告越智功は、前項の判決の確定を条件として、別紙物件目録一記載の建物についてなされた別紙登記目録(一)記載の登記の抹消登記手続をせよ。

三  被告越智功は、第一項の判決の確定を条件として、別紙物件目録一記載の建物についてなされた別紙登記目録(二)記載の登記の抹消登記手続をせよ。

四  被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスと被告越智功との間の、賃貸人を被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンス、賃借人を被告越智功とする昭和六二年一二月九日付の別紙物件目録三ないし六記載の土地についての、期間三年、賃料一か月金八〇〇〇円、期間中賃料支払済、譲渡・転貸ができる特約付の賃貸借契約はこれを解除する。

五  被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社及び被告越智功は、前項の判決の確定を条件として、別紙物件目録三記載の土地についてなされた別紙登記目録(三)記載の登記、別紙物件目録四記載の土地についてなされた別紙登記目録(四)記載の登記、別紙物件目録五記載の土地についてなされた別紙登記目録(五)記載の登記、及び別紙物件目録六記載の土地についてなされた別紙登記目録(六)記載の登記の各抹消登記手続をせよ。

六  被告越智功は、第四項の判決の確定を条件として、別紙物件目録三記載の土地についてなされた別紙登記目録(七)記載の登記、別紙物件目録四記載の土地についてなされた別紙登記目録(八)記載の登記、別紙物件目録五記載の土地についてなされた別紙登記目録(九)記載の登記、及び別紙物件目録六記載の土地についてなされた別紙登記目録(十)記載の登記の各抹消登記手続をせよ。

七  原告の被告越智功及び被告株式会社エンペレスはやしに対するその余の請求をいずれも棄却する。

八  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文一ないし六項同旨

2  被告越智功は、原告に対し、別紙物件目録一記載の建物及び別紙物件目録二記載の建物を収去して別紙物件目録六記載の土地を明渡せ。

3  被告株式会社エンペレスはやしは、原告に対し、主文一項の判決の確定を条件として、別紙物件目録二記載の建物から退去せよ。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  2項について仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁等

(被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社、同越智功、同株式会社エンペレスはやし)

1  原告の被告ゼネラルパシフィックファィナンス株式会社、同越智功、同株式会社エンペレスはやしに対する請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用のうち、被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社、同越智功、同株式会社エンペレスはやしとの間に生じた部分は原告の負担とする。

(被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンス)

被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスは、公示送達による適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しない。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1(一)  原告は、昭和六二年九月七日、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスに対し、金二二億円を、弁済期昭和六三年九月六日、同被告が銀行取引停止処分を受けたときは一切の債務について期限の利益を失う旨の約定で貸渡した。

(二)  原告は、昭和六二年九月七日、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスから、前項の貸金債務担保のため、同被告所有の別紙物件目録一記載の建物(以下「本件一の建物」という。)及びその敷地である同目録三ないし七記載の土地(以下「本件三ないし七の土地」というようにそれぞれ同目録の番号で呼称する。)に第一順位で極度額金二二億円の根抵当権の設定を受け、同日その旨登記を経由した。

(三)  被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスは、昭和六三年二月一日、二回目の手形不渡を出し、同月四日銀行取引停止処分を受けて倒産した。原告は、その後予め受領していた利息のうち期限の利益喪失日の翌日以降弁済期までの利息金八九四四万六五七五円(戻し利息)を相殺し、現在の元本の残額は金二一億一〇五五万三四二五円となっている。

(四)  原告は、前記根抵当権に基づき、本件一の建物及び本件三ないし七の土地について東京地方裁判所に競売申立をし、昭和六三年二月二三日競売開始決定を得て現在その手続が進行中である。

2(一)  被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスと被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社とは、昭和六二年一二月九日付で、本件一の建物について、期間三年、賃料一か月金三〇万円、期間中賃料支払済、譲渡・転貸ができる特約付の賃貸借契約を締結して被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社に同建物を引渡し、その旨別紙登記目録(一)記載の仮登記を経由した。

(二)  被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社は、昭和六三年二月一二日付で被告越智功に前項の賃借権を譲渡し、その旨別紙登記目録(二)記載の仮登記を経由した。

(三)  被告越智功は、本件一の建物及びその敷地である本件三ないし七の土地を占有している。

3(一)  被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスと被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社とは、昭和六二年一二月九日付で、本件三ないし六の土地について、期間三年、賃料一か月金八〇〇〇円、期間中賃料支払済、譲渡・転貸ができる特約付の賃貸借契約を締結して被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社に同各土地を引渡し、その旨別紙登記目録(三)ないし(六)記載の各仮登記を経由した。

(二)  被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社は、昭和六三年二月一二日付で被告越智功に前項の賃借権を譲渡し、その旨別紙登記目録(七)ないし(十)記載の各仮登記を経由した。

4(一)  被告越智功は、昭和六三年三月一七日頃から本件六の土地を堀り下げて別紙物件目録二記載の建物(以下「本件二の建物」という。)の建築工事を開始し、同年四月二六日頃これを完成させ、車庫兼倉庫として同年六月二三日同被告名義で保存登記を経由した。

(二)  被告越智功は、昭和六三年八月一日、被告株式会社エンペレスはやしとの間に本件二の建物についての賃貸借契約を締結し、同被告に同建物を引渡し、同被告は現に同建物を占有している。

5(一)  原告の本件根抵当権の被担保債権元本額は、前記のとおり金二一億一〇五五万三四二五円とこれに対する損害金である。

(二)  本件各物件の評価額は、競売を前提とした場合一五億八六〇〇万円であるが、短期賃貸借を主張する占有者がいる場合は約二〇パーセント程度減価して一二億六八八〇円となり、その差額は三億一七二〇万円である。

(三)  原告は、第一順位の根抵当権者であるため、右減価額は直ちに前記各短期賃借権の存在による損害ということができる。

(四)  被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスは、現在所在不明となっており、また、本件一の建物及びその敷地以外に見るべき資産はない。したがって、原告は、債権者代位権に基づき、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスに代位して、被告越智功に対し、解除判決の確定を条件として、本件一の建物を明渡すことと、本件二の建物を収去して本件六の土地を明渡すことを求めることができるというべきである(東京高裁昭和六三年七月二八日判決・判例時報一二八九号五六頁)。

6(一)  原告は、昭和六二年九月七日、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスとの間に、本件一の建物及び本件三ないし六の土地について、次の約定で停止条件付賃貸借契約を締結し、本件一の建物については東京法務局渋谷出張所同日受付第三四九九六号をもって、本件三ないし六の土地については、同出張所同日受付第三四九九五号をもってその旨それぞれ条件付賃借権設定仮登記を経由した。

(1) 停止条件 昭和六二年九月七日、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスが原告のために本件一の建物及び本件三ないし六の土地並びに本件七の土地について設定し、前記のとおりその旨登記された根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)の確定被担保債権が期日に支払われなかったときに賃貸借契約の効力が発生する。

(2) 賃料 一平方メートル当たり一か月金一〇円

(3) 賃料の支払時期 毎月末日

(4) 存続期間 効力発生の日から満三年間

(二)  1記載の事実によれば、遅くとも昭和六三年二月二三日には右停止条件が成就したものというべきである。

(三)  原告は、右(一)の各仮登記の本登記手続を求め、東京地方裁判所に訴を提起し、平成元年三月二三日勝訴判決を得て、右判決確定に伴い本件一の建物及び本件三ないし六の土地についていずれも東京法務局渋谷出張所平成元年八月一七日受付第二四七〇四号をもって前記賃借権設定仮登記の本登記を経由した。

7  よって、原告は、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスに対し、民法三九五条但書に基づき、本件一の建物及び本件三ないし六の土地についてなされた各賃貸借契約の解除を、被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社に対し、右解除に基づき、本件一の建物及び本件三ないし六の土地についてなされた各仮登記の抹消登記手続を、被告越智功に対し、民法三九五条但書に基づき、本件一の建物及び本件三ないし六の土地についてなされた各賃貸借契約の解除及び各仮登記の抹消登記手続並びに主位的に同被告に優先する対抗力を有する賃借権により無条件で、予備的に民法四二三条の債権者代位権により、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスに代位し、解除判決の確定を条件として、いずれも本件一の建物の原告への明渡と本件二の建物の収去及び本件六の土地の原告への明渡を、被告株式会社エンペレスはやしに対し、右債権者代位権により、被告株式会社ジャパン・エル・ファィナンスに代位し、解除判決の確定を条件として、本件二の建物からの退去をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスを除く被告らの認否及び主張

(認否)

1 請求原因1(一)の事実は知らない。

2 請求原因1(二)の事実のうち、原告主張の各登記の経由されている事実は認めるが、その余の事実は知らない。

3 請求原因1(三)の事実は知らない。

4 請求原因1(四)の事実は認める。

5 請求原因2ないし4の各事実はいずれも認める。

6 請求原因5(一)の事実は知らない。

7 請求原因5(二)・(三)の事実はいずれも否認する。

8 請求原因6(一)の事実は認める。

9 請求原因6(二)の事実は否認する。

10 請求原因6(三)の事実は認める。

(主張)

被告越智功は、被告ゼネラルパシフィックファイナンス株式会社から承継した賃借権の内容すなわち「賃借人は、賃貸人の承諾なくして賃借物に造作・模様替ができる。」とする約定に基づき、本件二の建物を建築したものである。

被告越智功は、本件一の建物の立地条件及びその構えからして車庫がないのはむしろ不自然であるため、金一二〇〇万円を投入して本件二の建物を建築したのであって、右建物の存在は、本件一の建物及びその敷地全体の価値を高めこそすれ、低下させるものではない。

また、被告株式会社エンペレスはやしは、本件二の建物を、その所有者である被告越智功から賃借して適法に占有、使用している。

第三  証拠<省略>

理由

一  請求原因1(一)の事実について判断するに、<証拠>を総合すればこれを認めることができる。

二  請求原因1(二)の事実について判断するに、<証拠>を総合すればこれを認めることができる(原告主張の各登記の経由されている事実は、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスを除く被告らとの間で争いがない。)。

三  請求原因1(三)の事実について判断するに、<証拠>を総合すればこれを認めることができる。

四  請求原因1(四)の事実は、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスを除く被告らとの間では争いがなく、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスとの間では、<証拠>によればこれを認めることができる。

五  請求原因2ないし4の各事実はいずれも被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスを除く被告らとの間では争いがなく、被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスとの間では、<証拠>を総合すればこれを認めることができる。

六  請求原因5の事実について判断するに、<証拠>によれば、本件一の建物及び本件三ないし六の土地の競売事件に関連して私的鑑定をした不動産鑑定士佐藤博の鑑定評価によれば、右土地、建物の競売を前提とした鑑定評価額は金一五億八六〇〇万円であるが、右土地、建物に短期賃借権を主張する占有者がいる場合の評価額は二〇パーセント減価して金一二億六八八〇万円となるとしていること、右競売事件で決定された競売物件全部の一括売却の最低売却価格は金一四億七五一〇万円であるが、原告の被告ジャパン・エル・ファイナンスに対する根抵当権の被担保債権の元本額は前示のとおり金二一億一〇五五万三四二五円であるから、仮に右最低売却価格による買受人があったとしても、原告は、六億円以上の債権回収ができなくなることが認められるばかりか、本件賃借権は、賃料全期間前払の特約及び賃借権の譲渡又は転貸ができるとの特約を伴うものであるから、右賃借権は、根抵当権者である原告に損害を及ぼすものであると認めるのが相当である。

以上によれば、原告の本件一の建物及び本件三ないし六の土地についての各賃貸借の解除請求は理由があり、また、右土地、建物についての別紙登記目録(一)ないし(十)の各仮登記は、原告の根抵当権の実行に事実上障害となるべきものと認められるから、根抵当権に基づく物権的請求権により右賃貸借解除の判決の確定を条件として、右各登記の抹消登記手続を求める原告の請求も理由があるというべきである。

七  請求原因6の事実について判断するに、同(一)・(三)の各事実については、いずれも被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンスを除く被告らとの間では争いがなく、同(二)の事実は請求原因1に関して認定説示したところから明らかである。

以上の事実を前提に、原告は、被告越智功に対し、先ず主位的に本件で根抵当権と併用された賃借権に基づき、無条件で、本件一の建物を明渡すことと、本件二の建物を収去して本件六の土地を明渡すことを請求している。

しかしながら、抵当権と併用された停止条件付賃借権設定契約とその仮登記は、抵当不動産の用益を目的とする真正な賃借権ということはできず、単に賃借権の仮登記という外形を具備することにより第三者の短期賃借権の出現を事実上防止しようという意図のもとになされたものにすぎないというべきであるから、その停止条件が成就したとして賃借権の本登記を経由しても、賃借権としての実体を有するものではない以上、対抗要件を具備した後順位の短期賃借権を排除する効力を認める余地はないというべきである(最高裁第二小法廷平成元年六月五日判決・判例時報一三二四号三三頁参照、右判決は賃借権設定予約契約に関する事案についてのものであるが、右に述べた理由は停止条件付賃貸借契約においても異なるものとは考えられない。)。

次に前記の事実を前提に、原告は、被告越智功に対し、予備的に債権者代位権に基づき、解除判決の確定を条件として、本件一の建物を明渡すことと、本件二の建物を収去して本件六の土地を明渡すことを予備的に請求し、同じく債権者代位権に基づき、被告株式会社エンペレスはやしに対し、解除判決の確定を条件として、本件二の建物からの退去を求めている。

しかしながら、所有者が解除判決の確定により占有の正権原を失った元短期賃借人に対しその占有する不動産からの明渡を求めることができるのは疑いないのであるが、根抵当権は、本来、目的物の交換価値を優先的に把握する権利であり、目的物の使用収益を支配する権利ではなく、右交換価値を侵害する物理的毀損行為に対してその排除を求めることができるのは格別、根抵当権者は目的物の占有関係について支配、干渉する権能がないし、目的物に関して所有者に対し一定の行為を要求する請求権を有するものではない以上、短期賃借権の解除請求をして勝訴判決を受け、これが確定したからといって、短期賃借人に対し明渡を求める代位権が発生するものではないから、根抵当権者が目的物に対する短期賃借人の占有を排除するために、その所有者(短期賃貸人)が短期賃借人に対して有する目的物返還請求権を代位行使することは、特段の事情のない限り、これを認めることはできないものというべきである。

本来、民法三九五条但書が担保権の保全として予定しているものは担保権の価値を阻害する賃貸借契約の解除という効果を宣言するにとどまり、それ以上のことは予定していないものと解すべきであるし、また、そもそも賃借権に基づき所有者の不法占有者に対する明渡請求権を代位行使することが認められるのは、賃借権が債権であって相対的効力しか有しないことから、原則として、賃借権自体に基づき第三者に対し返還請求、妨害排除請求をできないことによるのであるが、根抵当権は物権であって絶対的効力を有するのであるから、根抵当権自体に基づき第三者に対し物権的請求権を行使できるのであって、根抵当権に基づき根抵当権設定者の占有者に対する明渡請求権を代位行使するという迂遠な方法をとる必要はないし、仮に右代位行使を許すとすれば、短期賃貸借を解除して占有権原を失った占有者に対しては明渡請求ができるが、根抵当権者に対抗できない長期賃借権者に対しては明渡請求ができないことになるが、その結論は均衡を欠くというべきである。

結局、右物理的毀損行為以上の占有の排除は、根抵当権者の固有の権利(優先弁済権)からは認められず、その排除は、競売手続による売却の効果として、買受人が、民事執行法八三条の引渡命令又は通常の明渡判決の執行により実現すべきものである。もっとも、根抵当権者としては、解除判決を得たのみでは、一般には不法占有者がいることによる目的物の「占有減価」を避け得ないのであるが、これは、もはや民法三九五条但書の問題ではなく、一般の損害賠償の問題といわざるを得ない。

しかして、以上のとおり解するのが担保権と利用権の調節を図っている民法三九五条但書の立法趣旨にも合致し、根抵当権者が競落人の所有権取得に先立って事前に明渡まで求めておくことは担保権の保護としては厚きに過ぎるものというほかないから、原告引用の判決(東京高裁昭和六三年七月二八日判決・判例時報一二八九号五六頁)の見解には与することができず、前記特段の事情については原告の主張立証するところではないから、原告の被告越智功及び被告株式会社エンペレスはやしに対する債権者代位権に基づく明渡請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく失当というべきである(福岡高裁昭和五七年一月二〇日判決・判例タイムズ四六五号一一一頁、名古屋高裁昭和五九年六月二七日判決・判例時報一一三五号五九頁、大阪高裁昭和六〇年一月三一日判決・金融法務事情一〇九一号三七頁、東京高裁昭和六〇年八月二七日判決・判例時報一一六三号六二頁参照)。

八  以上の次第で、原告の被告株式会社ジャパン・エル・ファイナンス及び被告越智功に対する各賃貸借解除請求及び被告ゼネラルパシフィックファイナンス及び被告越智功に対する各抹消登記手続請求はいずれも理由があるから認容し、被告越智功に対する(収去)明渡請求及び被告株式会社エンペレスはやしに対する退去請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条但書、九三条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小澤一郎)

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